7/01/2011

液体ブルーレットはなんでいっきに減るのか?

なんか損をしているような気になる。最初、液はちっとも減っていかないのに、ある日突如、空になるんだもん。台風とか低気圧が来ると顕著に減ってたから、これは容器の上部の空気の圧力の関係だな、とはうすうすわかってた。だけど、あんなに残ってた液が全部出ちゃうのはどうにかなんないのかな。

と思って分解して仕組みを調べてみた。

まず、容器(タンク)の部分。これは底にひとつ穴があいているだけ。


容器の受け部分。容器の底にに突き刺すようになってる部分は、いかにも秘密がありそう。


外してみた。



それほどメカニックな構造ではなく、両脇の羽根状の部分に穴が空いている。容器への接続部分はごく小さい穴が空いている。どうやらこれは水を吸い上げるための形状のようだ。この部品をとりあえずここでは「羽根」と呼ぼう。

こうして次のようなことが解明した。
  1. 容器にはかなりドロッとした粘性の高く、水よりも重い液体が入っている。
  2. トイレを流すと容器にかかった水の一部は「羽根」の内側に入り込む。
  3. タンクに水がかかることで、中の空気が収縮する。
  4. 空気が収縮した分、羽根にたまった水が吸い上げられ、粘性の高い液の中を泡のように上昇する。
  5. 水がかからなくなると容器内の空気は膨張し、水よりも重い液だけが雫となって落ちる。

この繰り返し。中の液は次第に水に置き換わっていくため、最初のうちは減りが少ないように見えるのだ。ただ、水といっしょに空気も次第に容器に入り込む。空気の量が多くなれば温度差による膨張収縮の度合いも増すことになる、外気圧の影響も受けやすくなる。それに加えて、液は次第に粘性の低い水に置き換わるので穴から流れ出やすくなる。で、最後はドバーっと流れ出ておしまい、というわけだ。

まぁ、損はしてなかったんだな。

6/28/2011

MacのDockが暴走してたらParallelsを疑え

ふと気がつくと、MacのDockがCPUコアのひとつを100%消費している。明らかに暴走。ググってみたら、どうやらParallels 6とOS X 10.6.8との組み合わせで起きる問題らしい。


Parallelsを起動して、各仮想環境の"Configure"を開き、"Options"タブをクリック。"Applications"で表示されている中の "Show Windows applications folder in Dock" のチェックをはずしておく。





これでParallelsを終了すると、まだDockは暴走したまま。ここで、Macを再起動するか、アクティビティ・モニターを使って"Dock"を強制終了すれば、Dockが再起動されて暴走はおさまる。


2011年7月25日 追記
この問題は、Parallels 6のbuild 12092で修正されたようだ。最新版をインストールすれば解決する。

5/16/2011

「東海地震発生確率 30年以内に87%」の解釈は合っているのか?

とても勘違いが多い。地震はサイコロを振ったときの目の出方の予想とは異なる。東海地震が将来30年間に起きる確率が87%という場合、複数の札の中から毎年1回30年にわたり引いたときに、当たりの札を最後まで引かない確率が13%だ、と考えるのは間違いだ。なぜなら、このモデルで考えれば、1年後でも5年後でも10年後でも、その後30年内の発生確率は87%のままだ。どの1年を切り取っても、地震の発生確率はと6.6%にしかならないということになる。

地震はそのメカニズムから、前回発生してからの年数によって発生の危険性が増すもので、その発生は震源地ごとに周期的だ。なので、その発生の可能性は、時間軸を横にとってFig.1のようになるはずだ。これは、ティーグラウンドから一人のプロ・ゴルファーがボールを同じクラブで同じように打ったときに、飛距離がどのように分散するかを観測したときと似ている。いつ地震が発生するかは、打ったボールの中にたったひとつ印の付いているボールをティーグランドから順番に確かめて見つけることと同じだ。


ここで重要なのは、地震は100%起きるということだ。ゴルフボールの例で言うと、ボールの飛距離には限界があって、そこに達するまでに印のついたボールは必ず見つかる。

さて、Fig 2を見ていただきたい。現在をt0とすると、過去に地震が起きてからt0までに次の地震の起きた可能性はあったとしても、起きていないのだからそれは将来の可能性には影響がない。つまり将来ある時期txまでに地震の起こる可能性は、
A ÷ (A+B) × 100 %
である。txを30年後としたのが「確率87%」の意味するところだ。当然だが、txを小さくとるほど、発生確率は低くなる。

Fig. 2の例では発生可能性のピークは今よりも将来のほうが高いことになる。しかしFig.3のように、t0がこの発生可能性のピークよりも後だった場合、地震の危険性はむしろ今のほうが将来よりも高い。

わかるだろうか? t0の時点で1年以内に発生する確率のほうがその後の1年に発生する確率より高いのだ。

そして、分母の(A+B)はどんどん小さくなり、どんなにtxを短くとっても発生確率は100%に近づくことになる。

ここまでを理解すると、竹中平蔵氏のこのツイート:

30年で大地震の確率は87%・・浜岡停止の最大の理由だ。確率計算のプロセスは不明だが、あえて単純計算すると、この1年で起こる確率は2.9%、この一カ月の確率は0.2%だ。原発停止の様々な社会経済的コストを試算するために1カ月かけても、その間に地震が起こる確率は極めて低いはずだ。


と、それを批判する多田光宏氏のブログ記事:

竹中平蔵氏のための確率論入門

は、ちょっと滑稽である。というか、t0がどこに置かれているのか議論していない点で、危機への認識が全く甘い。今後30年間は、明日より今日の方が地震発生のリスクが高いかもしれないのだ。

4/28/2011

金を集めてから商売を考える

ホリエモンがいよいよ収監となる事態にあたって、Twitterにつぶやいたことなどをちょっとまとめてみる。

ライブドア事件、霞ヶ関との繋がりのある企業とない企業ととの間で、処罰の不公平感を感じずにはいられないが、実業がないままにあれよあれよと金をぶん回すようになっていった過程は目にあまるところがあった。ライブドアがまだオン・ザ・エッジだった頃から、プレスリリースをこまめに打つ会社だな、と思っていた。確かEudora Proの販売権を獲得したり、売れそうではないけれどよく名の知れた商品を手中に入れていった。Lindowsもそうだ。旧「ライブドア」も商売として破綻してたプロバイダーだった。

とにかく、名前は通っているけど売れてなさそうな商品、どうやって儲けるのかわからないサービス群が揃っていたので、会社としてやっていけてるのか不思議だったが、秘密は株のテクニックにあった。株価は期待値で膨らむものなので、ニッポン放送を買収しようとしたとき、いよいよバブルではなく、本当に儲かるビジネスの「実」の部分が欲しくてしょうがないのだな、と思った。

ライブドアの成長の手法は「金を集めてから実際の商売を整える」という感じに見えた。当時「なるほどなー、確かに金がなければ大きな商売はできないもんな」と感心した。それにしても、特に何もイノベーションがないウェブ制作会社にしては異様な成長ぶりだった。このときの日本の投資家の金の出し方に疑問を持った。アメリカでは金はなくてもユニーク技術やアイディアに投資がされるが、オン・ザ・エッヂにそんなユニークさはなかった。結局、日本の投資家は勝ち馬に乗ろうとする心理だけで金を動かしている印象が大きい。事業の中身なんか関係ない。ホリエモンはそのあたりをよくわかってたんだろう。

ホリエモンはその成功を今も引きずっているように見える。収入は激減してるであろうが今も六本木の高級マンションに住み、Twitterやメルマガで宇宙開発の夢を語るのは、周囲の期待感を金に変えていこうというオン・ザ・エッジ時代と全く同じ手法だ。実情はメール・マガジンや自著の売上でなんとか回しているんだろう。あまり筋の良さそうでないビジネスにも手を染めている。ホリエモンは投資家にとっては株価を吊り上げてくれる装置でしかない。所詮その役割としての「存在」なので、その装置が既存の本物の利権を奪いにかかると、突如国を挙げて潰しにかかる。しかし旧来の利権に属する企業は、同じような不祥事があっても国を挙げて守るのだから、ゆがんだ社会構造である。

ホリエモンがインタビューで「ベンチャーなんてどれも似たようなもんで、どこかいかがわしい部分がある」と言っていたが、そのとおりだろう。社会は「コンプライアンス」を歪めた形で解釈し、新興企業つぶしに悪用してはいまいか。コンプライアンスは本来、霞が関と癒着のある既得権益に対して適用されるべきものだと思うが、逆になっているように思う。

4/13/2011

男鹿半島周辺の不思議な地震

何を暗示しているんだろう。東北地方太平洋沖地震はM.9.0の超巨大地震だったが、その破断面からはるか遠くで大きな地震が起きている。秋田男鹿半島周辺と長野だ。この中で私は男鹿半島周辺の地震が気になってしょうがない。それは、男鹿半島が日本海に突き出しているからだ。

地形には意味がある。ちょこんと日本海に突き出している場所で、太平洋側の超大型逆断層型地震のあとに正断層型の地震が起きている。何かその地形を作った根本的な要因に関連がありそうではないか。

実は、男鹿半島は日本海に浮かぶ火山島だ。たまたま陸地と繋がっている。日本海には本州側と一定の距離で島が並んでいる。佐渡、能登、隠岐、玄界灘の小島などだ。これらのうちいくつかで重要な火山岩が産出する。「アルカリ玄武岩」だ。

岩石が熔けてマグマになるには3つほどのファクターがある。温度、圧力、そして水。温度が上がれが当然岩石は熔ける。同じ温度でも圧力が下がればやはり岩石は熔ける。水は岩石の融点を下げる。

岩石の温度を上げるのは岩石中の放射性物質と地球のより深いところから上がってくる熱も要因のひとつだ。(プルームと言う地球深部からの熱上昇が主要因とされているのかな。) 圧力は上部マントルのテクトニックな構造、つまりプレートの動きやぶつかり合いで変化する。水はプレート境界で沈み込んだ岩石から供給される。

日本の地下では太平洋側からたっぷりと水成分を"含んだ"岩石が沈み込んでおり、ある程度の深さに達すると陸側のマントルにそれが供給される。陸側のマントルでは岩石が部分的に熔融して上昇し、比較的地表近くの地下にマグマ溜まりを形成する。マグマはここでゆっくりと冷やされるうちに晶出する鉱物によって成分を変化させる。何らかの圧力的な要素が加わって地上に噴出するのが火山噴火だ。

マグマ溜まりでよく分化や混合が進むので、日本には安山岩質、花崗岩質の火山が多い。分化が進まないうちに噴火すると玄武岩質のマグマが出てくる。東京のそばでは富士山や伊豆諸島が玄武岩だ。

しかし、日本海に並ぶ島々に出ているアルカリ玄武岩はちょっと毛色が違う。アルカリ岩と分類されるマグマは、海洋プレートや30kmとか50kmのという非常に深い場所で生成される。日本海側に見られるアルカリ玄武岩は、分化のまったく進んでいない状態で地下深いところから一気に上がってくる。「一気に」というのは相当の勢いをもってということだ。そのため、そのマグマの通り道にある岩石を削りながら熔かさずに巻き込みながら数十kmを駆け上がって噴出する。そのため、冷えて固まるとマグマの中に地下で削ってきた岩石のかけらがそのまま含まれているのだ。

これは激烈な現象だ。なんでそんな激烈な現象の跡が日本海にあるのか不思議だったのだが、今回の男鹿半島周辺の地震ではっとした。日本列島は通常太平洋側からの強烈な押しの応力に支配されている。ところが太平洋側の広い範囲で開放されると、今度は逆に引きの応力が広範囲に働くのだそうだ。これが正断層を生む。引きの応力にはむらがあり、男鹿半島には力が集中したものと思われる。

男鹿半島周辺で発生している地震の震源は浅い。しかし、応力変化は深い部分にも及んでいるのではなかろうか。深い部分での圧力開放はアルカリ玄武岩質マグマを生むきっかけとなりそうだ。

男鹿半島でアルカリ玄武岩が最後に噴出したのは6万年も前のことらしい。しかし、アルカリ玄武岩の噴出が稀なことならば、1000年に一度とも言われるM9.0の地震が、さらに稀な現象を誘発させないとは言い切れないのだと思う。最近の研究でも地震と火山噴火との密接な関係が明らかにされてきている。太平洋沖の地震が男鹿半島周辺の地震を引き起こした、ということは男鹿半島の地形を構成する火山が太平洋沖の地震と関連性があるという可能性は十分考えられる。

3/24/2011

じゃぁ結局どのくらい被曝覚悟すりゃいいんだ

もう報道される単位がめちゃくちゃでどうしようもない。いろんな単位が出るもんだから値の大小は混乱するし、受ける影響なんて何を言われているのかさっぱりわからない。というわけで、全部シーベルトにシーベルトってことだ。なぜか? それが曝露した放射線の人体への影響を測る単位だからだ。


全部がシーベルトの値で示されれば、被曝量はカロリー計算のように足し算のみでわかる。一日の被曝量が抑えられれば情報に惑わされることはないのである。


重要なのはベクレル(Bq/kg)からシーベルト(Sv)への変換。ここで注意が必要だ。ベクレルの値は放射能がその時点でどれだけの放射線を出すのかを示すもので時間的な変化は表さない。同じ100Bq/kgでも、半減期の異なるヨウ素131とセシウム137とでは単位時間あたりの放射線量は異なるということだ。半減期の圧倒的に短いヨウ素131の方がセシウム137に比べ短い時間で放射線を出しつくすので影響は大きいのだ。 同じ100Bq/kgでも、半減期の異なる要素131とセシウム137とでは崩壊速度が違うので、放射性物質の全体量は半減期の長いセシウム137の方が断然多いのだ。


また、食物として摂取した場合、体内にどれほど吸収され留まるのか。代謝で排出されるまでどのくらいの時間がかかるかによっても放射線の影響は異なる。(経口摂取と吸引摂取とでも異なる。)


よって、ベクレルで発表された数値をシーベルトに変換するには複雑な計算をしないと求めることができないが、これまでの研究の積み重ねにより放射性物質ごとに算出された係数がある。それが実効線量係数だ。この係数のおかげでベクレルからマイクロシーベルトへの変換は掛け算だけで良い。



物質名
実効線量係数
ヨウ素131
0.022
セシウム134
0.019
セシウム137
0.013
ストロンチウム90
0.028



もっと詳しい表



100Bq/kgのヨウ素131の水を300ml飲んだ場合、水は1リットルが1Kgなので


 100Bq/kg × 0.3kg × 0.022 = 0.66 μSv



今回の事故の影響で年間に増加する被曝量を1mSvに抑えたいなら

 1mSv ÷ 365days = 2.7μSv/day


なので、300mlの水を飲んでもあと2.04μSvを他の食品から摂取したり、体外被曝しても大丈夫ということになる。


4月28日追記

ベクレルからマイクロシーベルトに換算する際には係数をかけるんだけど、この係数には体内半減期の要素が加わっている。つまり、体内にあるベクレル数の放射能が取り込まれてから体から排出されるまでの被曝量がμSvに換算されるからμSv/dayとして足し合わせるのは本来厳密じゃない。例えば10Bq/litterのI-131を含む水道水を2リットル飲んだ時0.44μSvと換算されるが、これは1日の被曝量ではない。ただし体内には1年以上留まらないので、年間の線量規制値1mSvを一日当たりに直した2.4μSvと比較する際、1日の外部被曝量と足すのがわかりやすい。

200Bq/litterのI-131を含む水を一時的に2リットル飲んでも、体外排出されるまでのトータルの被曝量が8.8μSvだが、1日あたりの被曝量は1μSvにも満たないはずだ。なので毎日飲み続けなければ影響は極めて小さい。「飲まない方が良いが飲んでも問題ない」という意味はこれ。なので、毎日の被曝量を意識していれば、たとえ少々放射能が多めのものを口にしたとしても、体への影響はほとんどないと思っていい。重要なのは続けて毎日とらないことだ。

2012年9月3日追記

ベクレルについて、明らかに間違った解釈をしていたので訂正した。斜体で本文に追記した。

3/22/2011

武田邦彦先生に聞いてみた

福島原発事故の放射能のことだ。ニュースではヨウ素131が基準値の何倍でセシウム134と137が基準値の何倍検出されたとか、ヨウ素131は半減期が短くて8日だが放射性セシウムは30年だとか、そんな情報が断片的に報じられる。だが、検出量や半減期が今後自体の成り行きにどう関わる情報なのかは見えにくい。

そこで、今や「ほんまでっかTV」のレギュラーである武田邦彦先生に、以下のような質問をしてみた。

武田先生

ブログを読んで勉強させていただいております服部と申します。
わかりやすくタイムリーな解説をありがとうございます。

ひとつ質問をさせてください。

現在原発から放出されている放射性元素はどれもウランの崩壊によって生じた副産物だと理解してます。現在、制御棒を挿入したことによりウランの核分裂反応はすでに止まっているとすれば、次のように考えてよろしいのでしょうか。

  1. 副産物の放射性元素は、これまでに漏れたものと現在原発内に蓄積されている
    もの以上に、新たに生成されることはない。つまり放射性物質の全体量はもう
    確定している。

  2. ヨウ素131の半減期は放射性セシウムなどにくらべ極端に短いため、原子炉に
    現在入っている燃料棒以外の長期保存されていた使用済み核燃料棒内に残存して
    いる量は少ないはずである。

  3. 長期保存されていた燃料棒内から漏れる放射性物質はセシウムなど半減期の
    長いものの比率が多くなるはずである。

  4. 現在漏れているヨウ素131は主に原子炉内の燃料棒由来である。

  5. 長期的に見ると放射性のセシウムやストロンチウムなどの漏洩量が環境影響
    を考える意味で重要である。
果たしてあの原発には、MAXでどれほどの量の放射性セシウム、ストロンチウムが見積もられているのでしょう???
服部


数分もしないうちに先生から返答をいただいた。
まさにその通りなのです。現在少しずつ放射線量等が出ていますが、実は原発が事故を起こした時にどのくらいの放射性物質が出るかということを予想ができるのですが、今のところテータがちょっと不足していて、わたくしの方では、なかなか正確な数字が出ませんが考え方としては全く正しい考え方です。しかしこのような収支計算のようなものはなかなか一般的ではないようです。 武田邦彦 中部大学




武田先生のブログでは、今回の事故とそれに関わる報道についての有益なコメントがまとめられている。


4月28日 追記-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-

4月9日のasahi.comの記事によれば、停止直後の原子炉には5,900,000TBqもの放射能があったという。そのうちの9割が放射性ヨウ素だ。テラベクレルは1,000,000,000,000ベクレルなので、5.9 x 1018 Bq。10の18乗!