文士村ガイドの会の関さんから、「星薬科大に文士村の画家6人が描いたという壁画があり、見せてもらえることになった」とのメールをいただいたのが2010年5月10日。私の祖父もその6人の中のひとりだとのことで、その見学に同行させてもらった。
そもそも、星薬科大の壁画に祖父が関わっていたなどという話は聞いたことがなかったので、正直びっくりした。父に聞いてみても「なんかそんなことがあったような覚えはある」程度で、いったいどのような経緯で仕事が持ち込まれたのかもよくわからないまま、実物を鑑賞することになった。
星薬科大がそこにあるということぐらいは承知していたが、実際に近づいたこともなく、ましてやキャンパス内に入るのはもちろん初めてだ。まずは、その講堂の外観の威容に圧倒された。大正13年に建てられたとのことなので、この白いコンクリートの偉大な構築物はすでに80年を超えて現代に存在している。にもかかわらず、その構造といい質感といい、現代建築よりもよほど頑強な印象を保っている。メインテナンスの賜物とも言えるのだろうが、それにしても現役で利用されている建物としての状態の良さに驚かされる。
ドアを開けて内部に入ると、ロビーは3階までの緩やかなスロープの折り返しにより構成されていた。そしてすぐさまその壁画は目に飛び込んでくる。左右の壁面をほぼ埋めるように、並行四辺形の巨大なキャンバスの油絵が描かれている。「推古時代の鹿茸狩り」をテーマに、様々な薬草を採取する女性たちの姿だ。2階から3階にかけては、それよりもさらに大きなキャンバスに、鹿の群れやそれを追う男たちの群像が描かれていた。
詳しいことはまだよくわからないのだが、1956年に関口氏による補筆がなされていることから、おそらくは全体を関口隆嗣画伯が構成し、それにしたがって祖父を含む他の5人が筆をふるったのではなかろうか。絵は大きすぎて写真で全体をいっきに捉えることができない。この絵の迫力は実際にその場に行かなくては「体験」できないものだが、ビデオに雰囲気のみを収めておいた。
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