12/06/2011

放射能汚染土は海洋底に沈めろ

こう書くと「世界につながっている海を汚すなんてゆるせない!」という感情が湧いてくるかもしれないが、まずは落ち着いて欲しい。最近、一部の理学者が真剣にこれを訴えているそうで、できればこの議論が冷静に検討されることを望んでいる。その理由をまとめてみる。

放射能は濃縮して処分するか薄めて環境に放出するか
放射能の危険を回避するには次のふたつの方法しかない。

  • 濃縮して人の生活圏から隔絶して処分する
  • 十分に薄めて環境に放出する
塵として空気中に舞い散ってしまったもの、海に流れだしてしまったものについてはもう拡散して薄まるのを待つよりほかない。一方、せっかく除染や雨により高濃度に濃縮している放射能は、そのまままとめて処分するべきで、再度環境に撒き散らすべきではない。

放射能の無害化は時間しか解決できない
核物理的な手法を取らない限り、どんな化学的、生物学的な方法を用いても放射能は各核種特有の時間を経ないかぎり減ることはない。原発で生成される放射性核種には半減期が数時間、数日のものから数万年のものまである。問題は人間の寿命よりも長い時間を経ないと十分に減ることのない放射性物質の処置だ。人の寿命どころか、社会の寿命や歴史の長さにも匹敵する半減期のものもある。
こうした放射能を長期間にわたり、人間の生活圏から隔絶させておかなくてはならない。 しかし、自分の曽祖父の名前の記憶すらおぼつかない人間が、その手の届く範疇に危険物を管理し続けることができるのか。

陸地で処分をするのは危険である
人間よりも長い寿命の放射能を、人間の手の届くところに残しておくことは、将来的に忘却され放射能に最遭遇してしまう危険性をはらんでいる。管理するにしろ、負担するコストが割りに合わない。また、日本のようにプレート境界に位置した活動の激しい場所に限らず、地表は様々な地学現象に晒されているところで、保管場所が自然災害からの影響を受ける危険性が高い。それは地中といえども同様だ。被災と同時に、放射能が人間の生活圏に戻ってきてしまうことが想定できる。

地球上で最も安定な場所が海洋底
人間の生活圏から遠く、地球上でいちばん安定している場所が太平洋などの海洋底だ。もちろん、海洋底でも地球の活動はある。例えば中央海嶺やハワイのようなホットスポットでは地下からマグマが絶えず湧き上がっているし、海溝部分では大地震も起きる。しかし、海洋底の大部分は、陸地や海の上層ほどの激しい活動はない。
海嶺で誕生した海洋底は、海溝で再び地下に沈み込むまで、数千万年から1〜2億年ものあいだ、年にせいぜい5cmほど移動するだけで、ほとんど何も起きない。 太陽光の届かない海底では、目立つ生物もろくにいない。また、大洋の真ん中では餌となるプランクトンの死骸すらもきわめて少ない。陸地の侵食でもたらされる泥の堆積すらないのだ。 海洋底では非常にゆっくりとした時間が流れている。まさに時間しか解決できない放射能を始末する場所として相応しい。

水の循環も問題ない
しかし、海水に放射能が漏れ出したら結果的に海洋汚染になるのではないかという疑念があるだろう。ところが、海洋底の水はそう短期間には循環していないのだ。 海の上層の水は太陽光や風の影響を受けて盛んに動いている。だが、海洋底の水はその影響受けず、もっと時間的、距離的スケールの大きな循環をしている。
極地で冷やされた水は重たくなり、ゆっくりと海底に沈んでいき、大洋にひろがっていく。この冷えた水は熱源がないため冷えて重たいまま上昇することがない。この水を移動させるのは、新たに生成される冷たい水の押す力くらいなので表層海流のダイナミックさに比べると、やはり時間的スケールが違う。 よって、少々の放射能漏れが生じたとしても、海産物などを通じて人間の生活圏に戻ってくることはほぼない。


陸地で起こる地殻変動や火山、洪水、地すべり、土砂崩れなど、自然災害の周期は数十年とか数百年というサイクルだ。これに比べて海洋底の様々な活動周期は、放射能処理に必要な時間を満足するに十分だ。それに海洋底は過酷な環境であるがゆえに人間の生活圏はおろか、多くの生物の生活圏からも隔絶している。

以上、どう考えても海洋底以外に放射能汚染土を処分するにふさわしい場所は思い当たらない。使用済み燃料すら、海洋底に処分した方がいいように思える。まぁ、それは原発をやめるという前提の話で、そもそも核使用済み燃料っていうのは出してはいけないゴミなので、海洋底にいくらでも捨てられるから原発続けていいということにはぜんぜんならないけどね。

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