9/23/2009

MSのマルチタッチ・タブレットのプロトタイプ


モックアップの段階だそうだが、Microsoftが取り組んでいるマルチタッチ・タブレットのプロトタイプとコンセプト・デモのビデオをGIZMODOが公開している。本当なのかどうなのかはわからないが、こういうブックタイプのタッチパネルというと、かつて注目を浴びたGO社のPenPointOSを思い出す。

Ver.1.0がリリースされたのが1992年1月とのことだが、もう少し前から発表されてたと記憶している。A4サイズ程度のタッチパネルPCをペンで操作するという、新しいパラダイムを提示して評判になった。PCの画面はノートに見立てられ、アプリケーションはタブで見出しがついたページとして表現されていた。ペンによるジェスチャーでアプリを操作し、文字認識機能もついていたので基本は手書き入力だ。

この新しいコンセプトに業界は一時的に盛り上がった。盛り上がりを見逃さなかったのがMicrosoftだ。すぐさま、Windows Penだったか、ペン入力に対応したWindowsを発表した。さてどちらのOSがこの市場の覇権を握るか、と注目され、メーカーからはいくつかのタッチバネルPCが発売されるが、結局いまいちセールスはぱっとせず、GOもAT&Tの傘下となったりしたが資金が尽きることとなる。GOのPenPointOSはとても魅力的で将来有望に思えたのだが、残念ながら生き残ることはできなかった。

ペン入力の次の仕掛人はAppleだった。1993年にKnowledge Navigatorを理想に掲げるJohn Sculleyの肝いりで市場投入され、これまた注目となった。しかし、セールスは伸びずじまい。ついには1998年にSteve Jobsの手により葬り去られることとなった。

結局、最初にペン・コンピューティングを商業的に成功させたのはUSRobosticsのPilot、後のPalmだ。GOやAppleに比べると、ぐっとスケールダウンしたハードウェアは、まともな文字認識機能も持っておらず、逆に人間がPalm Pilotに認識しやすい特殊な文字で入力するという形式だったが、これが実に効率よく、さくさくと入力ができた。皮肉なことに、機械に人間の文字を憶えさせるよりも、人間が機械に対応した方が早かったわけだ。

ワイシャツの胸ポケットに納まるサイズも、ファッション的に広く受け入れられた。発売された1996年当時、私は電子手帳とかPDAとかに全く興味がなかったのだが、アメリカ出張のとき多くの現地社員が胸にPilotを入れていたのにおどろき、あわてて購入して帰国したくらいだ。(もちろん日本語対応なしだったが。)Newtonが10万円以上したのに比べ、たしか3万〜4万円で買えたというのもヒットの理由だろう。

MSはPalm Pilotの成功を黙ってみているわけもなく、Windows CEですぐさま追随しCompaqなどから端末が発売された。しかし、競争により搭載されるアプリケーションの複雑さが増すにつれ、また、コンタクト・リストなどPDAとしての重要な機能が携帯電話に奪われてしまい、両者ともユーザーの支持を失っていく。

現在、タッチパネルPCの主役となっているのはiPhoneだ。面白いことに、iPhoneはペン入力ではない。また、今回リークされているMSのタッチパネルもペン入力ではない。コンピューターへの入力に、ペンは決して使いやすい道具でなかったということだ。タッチパネルPCに対する試行錯誤は、様々なマーケティング的示唆を与えてくれる。コンシューマーの心をとらえるというのはどういうことなのか、少し考察してみたい。

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