何を暗示しているんだろう。東北地方太平洋沖地震はM.9.0の超巨大地震だったが、その破断面からはるか遠くで大きな地震が起きている。秋田男鹿半島周辺と長野だ。この中で私は男鹿半島周辺の地震が気になってしょうがない。それは、男鹿半島が日本海に突き出しているからだ。
地形には意味がある。ちょこんと日本海に突き出している場所で、太平洋側の超大型逆断層型地震のあとに正断層型の地震が起きている。何かその地形を作った根本的な要因に関連がありそうではないか。
実は、男鹿半島は日本海に浮かぶ火山島だ。たまたま陸地と繋がっている。日本海には本州側と一定の距離で島が並んでいる。佐渡、能登、隠岐、玄界灘の小島などだ。これらのうちいくつかで重要な火山岩が産出する。「アルカリ玄武岩」だ。
岩石が熔けてマグマになるには3つほどのファクターがある。温度、圧力、そして水。温度が上がれが当然岩石は熔ける。同じ温度でも圧力が下がればやはり岩石は熔ける。水は岩石の融点を下げる。
岩石の温度を上げるのは岩石中の放射性物質と地球のより深いところから上がってくる熱も要因のひとつだ。(プルームと言う地球深部からの熱上昇が主要因とされているのかな。) 圧力は上部マントルのテクトニックな構造、つまりプレートの動きやぶつかり合いで変化する。水はプレート境界で沈み込んだ岩石から供給される。
日本の地下では太平洋側からたっぷりと水成分を"含んだ"岩石が沈み込んでおり、ある程度の深さに達すると陸側のマントルにそれが供給される。陸側のマントルでは岩石が部分的に熔融して上昇し、比較的地表近くの地下にマグマ溜まりを形成する。マグマはここでゆっくりと冷やされるうちに晶出する鉱物によって成分を変化させる。何らかの圧力的な要素が加わって地上に噴出するのが火山噴火だ。
マグマ溜まりでよく分化や混合が進むので、日本には安山岩質、花崗岩質の火山が多い。分化が進まないうちに噴火すると玄武岩質のマグマが出てくる。東京のそばでは富士山や伊豆諸島が玄武岩だ。
しかし、日本海に並ぶ島々に出ているアルカリ玄武岩はちょっと毛色が違う。アルカリ岩と分類されるマグマは、海洋プレートや30kmとか50kmのという非常に深い場所で生成される。日本海側に見られるアルカリ玄武岩は、分化のまったく進んでいない状態で地下深いところから一気に上がってくる。「一気に」というのは相当の勢いをもってということだ。そのため、そのマグマの通り道にある岩石を削りながら熔かさずに巻き込みながら数十kmを駆け上がって噴出する。そのため、冷えて固まるとマグマの中に地下で削ってきた岩石のかけらがそのまま含まれているのだ。
これは激烈な現象だ。なんでそんな激烈な現象の跡が日本海にあるのか不思議だったのだが、今回の男鹿半島周辺の地震ではっとした。日本列島は通常太平洋側からの強烈な押しの応力に支配されている。ところが太平洋側の広い範囲で開放されると、今度は逆に引きの応力が広範囲に働くのだそうだ。これが正断層を生む。引きの応力にはむらがあり、男鹿半島には力が集中したものと思われる。
男鹿半島周辺で発生している地震の震源は浅い。しかし、応力変化は深い部分にも及んでいるのではなかろうか。深い部分での圧力開放はアルカリ玄武岩質マグマを生むきっかけとなりそうだ。
男鹿半島でアルカリ玄武岩が最後に噴出したのは6万年も前のことらしい。しかし、アルカリ玄武岩の噴出が稀なことならば、1000年に一度とも言われるM9.0の地震が、さらに稀な現象を誘発させないとは言い切れないのだと思う。最近の研究でも地震と火山噴火との密接な関係が明らかにされてきている。太平洋沖の地震が男鹿半島周辺の地震を引き起こした、ということは男鹿半島の地形を構成する火山が太平洋沖の地震と関連性があるという可能性は十分考えられる。
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